昨晩、テレビをつけたら「ゼンダ城の虜(The Prisoner of Zenda)(1937年)」をやっていた。
なつかしい。
確か初めて原作の和訳を読んだのは中学生のころ。その後イギリス留学中の1990年ぐらいにテレビでこの映画版を初めて観た。ジョージ・マクドナルド・フレイザーのフラッシュマン・シリーズのパロディー版「Royal Flash」も読んでいる。
アントニー・ホープの原作の出版が1893年だっていうから、この話も古いんだねぇ...。この手の「普通の人が王様や大統領と瓜二つで替え玉をやるという冒険譚」の元祖でしょうな。そうした意味では映画「Dave」や「影武者」のひいおじいさんぐらいにあたるのかもしれない。
この1937年の映画版では主役のルドルフ・ラッセンディル/ルリタニア国王ルドルフ五世を「コールマンひげ」のロナルド・コールマンが演じている。国王の親友、フリッツ・フォン・ターレンハイム役はまだ若い、ゆで卵みたいな顔したデイヴィッド・ニーヴン(以前の関連エントリー、その1、その2)。国王に忠実なザプト大佐はオーブリー・スミス。
かたや悪役勢。国王の弟、マイケルはレイモンド・マッセー(後にリンカーン役で名を成します)。ヒトクセもフタクセもあるマイケルの手下、ヘンツォウのルパートにダグラス・フェアバンクス・ジュニア。そしてマイケルの愛人、アントワネット・ドゥ・モウバンにメアリー・アスター。
アスターさんは「マルタの鷹」でもラストにボギーを誘惑しようとして、ボギーにイケズにされています。なんか、そんな役が似合うハリウッド女優には珍しい「昔の名前で出ています」的、陰のある美人なんでしょうか。まぁイングリッド・バーグマンの懇願にもなびかなかったボギーですから(「カサブランカ」ね、念のため)、しょうがないか。
それにしても、こういう「淫らな女」役をフランス人にしてしまう原作者、ホープさん。なんかいかにもイギリス人な短絡思考です。
映画公開時には、この「だらしない国王に代わってイギリス人紳士が正義を行う」というプロットラインが、シンプソン夫人に骨抜きにされて大英帝国の玉座を辞した(1936年の出来事)エドワード八世への批判と受け止められたらしい。確かにフリッツ役のデイヴィッド・ニーヴンが言う最後のセリフ、
「歴史は必ずしも正しい人間を国王に選ばない」
というのはウィンザー公エドワードへのあてつけととれるかもしれない。
コールマン、ニーヴン、そしてザプト役のスミスは当時のハリウッド在住イギリス人俳優のリーダー的存在だったので、何らかの意図がそこに働いていたとしてもそれは不思議ではないかもしれん。
もっと面白い話は、コールマンが実はイギリス情報局のエージェントだったらしいという話。これは作家のゴア・ヴィダルが言っているのだが、もしそうだとしたら国王になりすますルドルフ役を演じるコールマン君の演技をまたいっそう興味深く観ることができます。
オーブリー・スミスはクリケットのイングランド代表だったこともあるらしく、ハリウッド・クリケット・クラブのキャプテンだったとか。 そしてスミスは戦後、「良好な英米関係への貢献」を理由にナイト位を授爵されている。
そしてサンドハースト(イギリスの陸軍士官学校)出身のニーヴン。
怪しい三人組だ...。
君たち...第二次世界大戦前夜のハリウッドでいったい何をしていたのかね...?
付録:なんか笑えるゼンダ城の虜ファンサイト...というか悪役のはずのマイケル応援サイト。
ブログ終了のお知らせ
2 years ago
No comments:
Post a Comment