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Epiphany of Yute the Beaute
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Friday, May 17, 2013
映画とTVで学ぶ「英国史」- VII
第二次世界大戦と戦後
第二次世界大戦のイギリスを代表する人物といえば、これは首相ウィンストン・チャーチルにほかならないわけですが、ここではあえて戦時中の宰相チャーチルではなく、それ以前の不遇時代のチャーチルをテーマにした「
The Gathering Storm
」(2002年)ご紹介したいと思います。
この映画にでてくるチャーチルはすでに政治的には「過去の人」と呼ばれ、常に不機嫌で周囲にあたりちらす困った老人。またチャーチルというと「イギリス紳士」の鑑ととらえている向きもありますが、その行儀の悪さは有名で、この映画ではチャーチル役を熱演するアルバート・フィニーはその傍若無人ぶりを思う存分に発揮しています。
史実にのっとり、ドラマの中でチャーチルは対ドイツ戦略において航空戦力の重要性を繰り返し説きますが、その航空戦力の切り札であったのが戦闘機「スピットファイア」。このスピットファイアの開発秘話を映画化したのが「
The First of the Few
」(1942年)です。もちろん戦時中の国威発揚を目的とした映画です。
この作品を制作、監督そして主演したのが俳優のレスリー・ハワード。「風と共に去りぬ」のアシュレー役で有名ですが、ハンガリー系のイギリス人であり、またユダヤ人でもありました。ハワードは1943年6月、中立国ポルトガルでの講演旅行からイギリスへの帰途において、彼を乗せた旅客機がドイツ空軍の戦闘機に撃墜され非業の死を遂げます。なぜ戦闘の対象外となっていた旅客機をあえて攻撃したのか。ハワードの暗殺が目的だったのか。この事件は「BOAC777便のミステリー」として知られています。
そうしたハワードのミステリアスなバックグラウンドも興味深いですが、日本人としてこの映画が面白い理由は、ジブリが「紅の豚」を作るにあたってこの映画を参考にしただろうと思われるからです。
もともとスピットファイアのスーパーマリン・エンジンは水上飛行機のスピード競争、「紅の豚」でもくり返し言及される「シュナイダー・カップ」向けに開発されたもので、この映画でもシュナイダー・カップの場面が出てくるのです。ジブリのファンの方は、この映画を見ながら、「紅の豚」と比較してみるのも一興かもしれません。
第二次世界大戦の対独戦争に勝利を収めたチャーチルは、1945年7月の総選挙でまさかの大敗を喫し、政権を労働党のクレメント・アトレーに明け渡すことになります。
完全雇用と福祉社会の構築を基本政策と掲げ、輝かしい戦勝国としての未来像を目指して発足した労働党政権でしたが、戦時借款の重圧と崩壊していく大英帝国システムの再構築の板挟みとなり、困難な政権運営を余儀なくされます。
そうした政治のウラでは、戦時中と同じ物資配給による生活を強いられ、遅々として進まない戦災からの復興に業を煮やした庶民がいました。
こうした庶民の不満を代弁したのが、英国からの独立を宣言したロンドンの市民を描くドタバタ喜劇、 映画「
Passport to Pimlico
」(1949年)です。
この映画の存在と、これが当時の世相を反映したものであることを私に教示してくれたのは、ジャーナリスト、アンドリュー・マーのTVドキュメンタリー、「
History of Modern Britain
」でしたので、こちらもご紹介しておきます。
結局、戦後の英国はアトレー内閣が端緒をつけた社会主義国家への胎動と、それに対する保守の反動という不毛な振り子のような道を歩むわけですが、その結果は非効率的な国有企業の群れに代表される肥大化したパブリック・セクターと、横暴化した労働組合でした。また財政難によりかつての大英帝国を維持する国力を失い、植民地は次々と独立していきます。
このように落ち目に歯止めをかけられない、「決められない」政府を揶揄して大ヒットしたのがTVコメディー・シリーズ、「
Yes, Minister
」(1980年)と、その続編「
Yes, Prime Minster
」(1986年)です。こちらに関しては、すでに
以前のエントリー
でとりあげていますので、ご参照ください。
こうしてすっかり自信喪失に落ち入っていた英国に、緊縮財政と国有企業の民営化という往復ビンタの喝を入れ、おまけにフォークランド戦争での勝利をもたらしたのが鉄の女、マーガレット・サッチャー首相です。
サッチャー首相は最近では「
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(The Iron Lady)
」(2011年)でとりあげられていました。
しかしここはあえてサッチャー時代の影ともいえる、彼女の「往復ビンタ」の影響を最も受けた英国の炭坑産業コミュニティーを題材にした映画を紹介します。
ひとつは炭坑の閉鎖と共に解散を余儀なくされる、炭坑夫たちによるブラスバンドの顛末を描いた「
Brassed Off
」(1996年)。
そしてもうひとつは、ミュージカルにもなった「
Billy Elliot
」(2000年)です。
バレーに夢をかける息子のために、炭坑閉鎖反対デモの列を離れ、スト破りを選択する父親の苦渋の選択と、バレーダンサーとして大成する息子の姿に、現代の英国に暮らす英国人たちが自分史を重ねつつ共感し、大ヒット作品となりました。
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