Monday, November 12, 2007

Talladega Nights

独りモンの映画鑑賞、その4

Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby」(2006年作品)
映画の公式サイト

初めから違う映画の話で恐縮だが、今年の夏、アメリカで「Hairspray」という映画が公開された。50年代のアメリカを舞台にしたミュージカルの映画化なのだが、このミュージカルのオープニング・ナンバーが「Good Morning Baltimore」(おはようボルティモア!)という曲。主人公の太目の女の子が歌うこの曲。「ボルティモアはすばらしい町、毎日チャンスがあふれているわ〜」みたいな曲なんだが、この曲を例えばニューヨークのブロードウェイの舞台で聞けば、ミュージカル作者の皮肉というかアイロニーが伝わると思う。ボルティモア...全米でデトロイトに次いで危険な町らしい。人口の22% が貧困層...。

でもこのミュージカル映画が、例えば日本や香港なんかで公開されるころには、観衆はそのアイロニーを理解しない、またできないと思うんだよね。

ミネソタあたりの中西部アメリカ人でもこうした皮肉は解せないんじゃないだろうか...。

本題に戻りますが、このTalladega Nightsも、そうした「もしかしたら観衆に理解されていない皮肉」がてんこ盛りな映画です。

最近売り出し中のコメディー俳優、Will Ferrellがカーレースのドライバーを演じる。このカーレース、NASCARというストックカー・レース。最近アメリカでアメリカン・フットボールに次ぐテレビ視聴者数を稼いでいるという。前回の大統領選挙では「サッカー・マミーにNASCARオヤジ」ということで、アメリカのハートランドの中流家庭の代名詞になったぐらい。(つまり子供たちにサッカーをやらせるお母さんと、休日は家でカーレースをテレビ観戦するオヤジということ。)

NASCAR自体、ノース・カロライナ州に端を発しており、アメリカ南部を中心に盛んです。

ようするに、まぁ早い話、誤解を恐れずに言えば、ブッシュ大統領のコアな支持者層とNASCARファンはかなり重なるわけです。

そしてこの映画。NASCARの興奮を描きながらも、その背景となるアメリカ・カルチャーを散々ばかにしまくっているのです。

主人公のリッキーはひょんなことからNASCARのドライバーになるのですが、これがマイケル・ムーアさんがいうところの「バカでまぬけな白人アメリカ人」の典型。やたらと神様とジーザスの名を連発するわりには、食前のお祈りでは宗教無知をさらけ出し、しかも食べるものはファースト・フードばっかし。なにが何でもナンバー1にこだわり、勝つことのみに価値観を見いだしている。そんな彼がゲイでフランス人のドライバー(演じるのは「Borat」のサーシャ・バロン・コーエン...爆笑!)に破れて打ちのめされ、ニューエイジ趣味なお母さんの助けで復活する...というのがあらすじ。

よくもまぁバカにしまくったりという感じです。

リッキーがフランス人ドライバーに組み伏せられるシーン。

「『オレはクレープが好きだ』と言え。じゃなきゃ腕をへし折るぞ。」
「いやだ!絶対言わないぞ。」
「そうだリッキー、いっちゃだめだ。フランス野郎の言いなりになるな。」
「おぉ!でも『クレープ』ってなんだ?」
「あのうすいパンケーキのことだろう。」
「あぁ、あれか。あれオレ大好きだ。」
「そう。アメリカ人、『クレープ・スゼット』を知っているか?」
「なんだそりゃ。」
「うすいパンケーキに砂糖とレモンをまぶしたやつだ。」
「あぁ!あれオレもう大好物!」
「ほら、だったら『オレはクレープが好きだ』といえ。」
「いやだ〜!」

フレンチ・フライをフリーダム・フライと改名したアメリカ人を彷彿とさせますな。

「アメリカ人、オレがなぜアメリカにやってきたか分かるか。」
「公立学校教育と水道水の質、そしてブッシュ大統領の叡智。ほかの移民たちと同じ理由だろう?」

この映画DVDの特典がふるっていて、キャスト・スタッフのコメンタリーが映画公開の25年後ということになっている。

「いまミズーリ州に住んでいるんだって?最近そっちはどうだい?」
「ご存知のように、地球温暖化によりミズーリ州の大半水没しています...。」

またDVDの冒頭にはこんな断り書きが...

「この映画の内容はソニー、およびソニー・ホーム・エンターテイメント社の意見を反映するものではありません...」

一見の価値はある映画です。

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